先進再生医療
歯周病とインプラントの研究で“食べる幸せ”を提供
40代以上に大人気 「大人の矯正」を実現
最近、40代以上の方が歯並びやかみ合わせを整える、「大人の矯正」の需要が高まっているのをご存知でしょうか。定年後の方を対象に行われた、あるアンケート調査では、「若い頃にしておけばよかったこと」のトップ3位に「歯の治療」が挙がりました。しかしながら、この年代は子どもと違って歯周病にかかっている率がとても高い。そのために矯正ができない、という方がたくさんいるのです。
そこで、私は矯正学の先生と手を結び、成人矯正治療を始めました。歯周病ケアと矯正治療、ともに対応することで、より多くの需要に応えたのです。
“歯周病ケア×インプラント治療”で組織を再生、機能を回復させる
なぜ、そんなことができたのか。それは、私の研究室が、歯周病とインプラントの2つを専門に扱う唯一の研究室だからです。
具体的には、歯周組織再生療法などを研究しています。例えば、抜いた歯のまわりに歯周病がある場合、その周囲の骨がなくなっていることがあります。すると、そこにインプラントを埋め込むことができません。私たちは、その骨を再生し、インプラント治療を可能にするための開発を進めているのです(下の画像参照)。骨を造生するまたは再生することで、口の中の失った機能の回復を実現します。
歯周病患者のインプラント治療の流れ
1. 歯周病で上顎洞の骨に厚みがありません。(CT画像左赤丸部分)。そこで歯肉や粘膜をはがして自家骨や人工骨を入れます。歯肉や粘膜を元に戻し、縫い合わせると、骨に厚みができます。(CT画像右赤丸部分)
2. そこにインプラントを埋め込み、固定します。
3. 人口歯冠を取り付ければ完了です。
生活レベルの向上をめざすすべては患者さんの幸せのために
私たちの研究のねらいは、単に口の中を守るだけではありません。全身の健康、ひいては寿命にまで影響すると考えています。歯周病の菌は糖尿病や肝臓病に関連すること、“ちゃんとかむ”ことは脳に良い刺激を与えることなどは、様々な研究・実験により明らかにされています。
全身の機能を回復させ、美味しいものを美味しく食べる。そんな生活レベルの向上につながる研究をめざしています。「すべては患者さんの幸せのために」。これが私たちのモットーです。
児玉 利朗 PROFILE
神奈川歯科大学歯学部を卒業後、約14年間、歯周病学講座に在籍。その後、故郷鹿児島県で歯周病・インプラント専門医として開業してからも、生体材料の研究開発とそれに伴う新治療法の研究を続けた。2014年に神奈川歯科大学大学院教授に赴任。現在に至る。