21世紀型研究(2)
社会的な環境と口腔の健康状態や生活習慣病との関係をビッグデータを使った研究で解き明かす
個人での指導では限界のある生活習慣病対策の新たなアプローチを開発する
10万人以上の高齢者を追跡調査して得られたビッグデータを活用して、歯や口の健康状態が認知症、転倒、抑うつなどの全身の健康状態に影響していることを明らかにしています。
この成果は、すべての人々が生涯を通じて歯と口の健康を保てる社会を作る政策立案の根拠となります。
歯や口の健康が全身の健康にも影響することが明らかになることで、今まで以上に歯科の重要性が強調され、「歯科口腔保健の推進に関する法律」の制定にも寄与しました。
歯や口に関する健康格差にも注目し、自治体と協力して個人を取り巻く社会的な環境との関連を調査したり、歯や口の健康な人ほど医科の医療費が少ないという医療経済的な研究も行っています。
人と健康の関連を検討する「疫学」から発展した「社会疫学」を歯科領域に応用することで、これまで限界のあった個人への保健指導を通じて行動変容を促す生活習慣病対策分野において、社会環境などに介入する新しいアプローチを開発しています。
幅広い学問分野で学ぶことで、科学的なものの見方や問題解決能力を身に付ける
医学、社会学、栄養学、心理学、作業療法学、経済学、地理学などさまざまな分野との共同研究を通じて、幅広い知見と問題発見、問題解決能力が養われます。
これらは将来どのような分野に進むとしても必要となる能力です。
歯学部卒業後には、研究者、医療人、行政関係者など様々な進路が考えられますが、いずれも医学的なものの見方や考え方、問題発見・問題解決能力は必要かつ重要な能力です。
どのような分野でも本学で身に付けたこれらの能力を十分に発揮して、社会に貢献してもらいたいと考えています。
山本 龍生 PROFILE
岡山大学歯学部卒業後、岡山大学大学院歯学研究科予防歯学専攻博士課程修了。平成21年4月より神奈川歯科大学社会歯科学講座歯科医療社会学分野において講師、准教授。2013年4月より神奈川歯科大学大学院歯学研究科社会歯科学講座准教授、同口腔科学講座社会歯科学分野教授に就任。2019年4月より災害医療・社会歯科学講座に再編。2021年4月より、歯学部社会歯科学系健康科学講座社会歯科学分野に再編。同分野教授、現在に至る。